私とアイドルと鈴と

みんなちがってみんないい

鹿肉とエールビール

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10月24日。

初めて、音楽朗読劇というものを観てきました。本髙克樹くんと今野大輝くんのコンビで昨年も「幸福王子」という作品を上演していたらしく、その第二弾となったのが今回の「ロビン」。音楽朗読劇とはその名の通り"音楽"と"朗読劇"の融合を試みたスタイルで、ミュージカルともまた違う新しい形のエンターテイメントでした。この日、衝撃を受けて劇場を後にしたわたしはもう興奮状態で。

 

 

第一声がコレ。ほんとにやばいもの見ちゃったと思ったんだろうね。そしてこの日どころかしばらくロビンを引きずって生きて行くことになります。

 

 

YouTubeにてスポット映像が公開され、何度も繰り返し観ながら記憶を必死に辿りながらなんとかロビンに会いたい気持ちを抑え……

 

 

 

 

 

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られませんでした!!!!!!

 

完敗。俺の負けです。

当日券が買えてしまう環境が良くなかった。全然チケット取れる状態だったし。ということで観劇から4日後、何食わぬ顔して有楽町に降り立ちました。余談ですが、この日は京本大我くんの「NEWSIES」という舞台を元々観に行く予定だったので丁度いいかと思い(?)ハシゴしました。同じ有楽町だしいいかなって……

あと大阪が11月5日〜7日の4公演残ってるのかな?流石に遠征はできないので行きませんが、多分まだチケット買えるので気になる方は是非観て欲しい!

ということで、今回のブログは前半ネタバレ無しの布教ブログにしようかなと。後半は内容も含めた感想を書くので、ネタバレ踏みたくないよって方がいたらそこだけすっ飛ばしてくださいな。

 

 

 

 

 

冒頭でも言いましたが、朗読と音楽の二本柱で構成された舞台は新鮮でした。ライブにも近いところがあって、観客も参加型、即ち会場に足を踏み入れた瞬間からシャーウッドの森の仲間になります。本髙くん発信の「緑活動」により更に一体感が増してたので、ピアスとか髪飾りとか小さなものでも何かしら緑を取り入れると更に楽しいと思います!

歌の中や話の中で拍手を求められるタイミングも結構あるので、オペラグラス勢は首に掛けるとかしてすぐに両手が空くといいかも。拍手が小さいとロビンに怒られちゃうので。

キャストは4人とバンドメンバー。本髙くんと今野くんがロビンとジョンを演じて、ROLLYさんとカズマ・スパーキンさんは残りの役を演じます。ナレーターと会話劇で話が進む中、音楽が入ることで場面展開や効果音を表現できるというのが普通の朗読劇との大きな違い。歌詞の延長に台詞があり、台詞の延長に歌詞がある。超好きな構成。あくまで朗読劇なので、基本的に台詞は座って読まれます。身体の動きで大きく演じるのが舞台の醍醐味だとわたしは思ってますが、今回はそれが無い代わりに声色や言い回しで演技をしなくてはならない。難しいはずなのに、本髙くんも今野くんも声の使い分けや台詞と台詞の間が凄く良くてとても惹き込まれました。自分の観ているステージとは別に、脳内で語られるストーリーを想像しなくてはならない。本髙くんのブログにもありましたが、とても能動性を必要とする作品なので、それぞれの思い描くロビンやジョンがいる。恐らく誰一人としてわたしの想像するロビンやジョンの顔、背格好、雰囲気と全く同じものを想像する人はいないだろうと思ったらドキドキしますね。自分だけのロビンやジョンがいて、同じ会場で同じ舞台を観ているのに全く同じ話ではないところ。それがこの作品の見どころかなと思いました。

内容を伏せて書けるのはここまでかな。これ以降は内容を含めた感想を書くので「これから観るからネタバレは踏みたくない!」って方はここで閉じてくださいね。わたしの主観てんこもり感想を呼んでやってもいいよって方は続きをどうぞ!

 

 

 

 

 

まず最初にキャスト紹介があるんだけど、今野くんはこんぴー、本髙くんはぽんちゃんって紹介してくれました!可愛いね!あとは本髙くんのシルバーネイルとか、今野くんのハイヒールブーツとか、衣装ひとつひとつも良かった。曲のとき足元でリズム取ってノリノリな本髙くんと静かに聴き入る今野くんの差も最高でしたね。

さて、舞台はイングランドノッティンガム。シャーウッドの森に暮らしていた弓の名手であるロビン・フッドが主人公のストーリー。ロビンが弓で人を殺してしまう場面から始まり、シャーウッドの森に身を隠して暮らします。義賊として「困ってる人を助ける」「女と子供は傷つけない」と誓い、シャーウッドの森に集まった仲間を従えていく。そんな中出会うのがジョン・リトルという身長2m、体重100kgの大柄な男。そんな役を小柄な今野くんが演じるというギャップがまたいいし、朗読劇だからできるキャスティングでテンションが上がりますね!ロビンとジョンは橋をどちらが先に渡るかという些細なことで殴り合いを始めますが、負けたロビンは弓なら勝てたとリベンジを申し込みます。ここでロビンは土下座をして頼み込むんだけど、結構アドリブが入ってるぽいんだよね。一回目と二回目を比較したりレポを見たりする限りアドリブを入れてる場面が他にも何個かあって良かった!思わずクスッとしちゃうようなものが多くて、早く土下座しろと催促するジョンに向かって「小さな手でクルクルしやがって」みたいなこと言って悪態つくロビンが可愛かったね。ジョンの大男って設定ガン無視で今野くんに言ってるのよそれは。で、話を戻しますと、弓の対決ではロビンの圧勝。仲間にならないかというロビンの誘いにジョンは「お前は俺の兄貴だ」と言い、俺たちは義兄弟だと二人で歌います。ジョン・リトルだと名乗ると「そんなにデカいのにリトル?いっそのことリトルジョンにしろ!」とロビンが提案。「リトルジョン!リトルジョン!」とシャーウッドの森の仲間(観客)が手拍子で煽って、そこからリトルジョンと呼ばれることに。リトルジョンはロビンの右腕として、弟として共に行動するようになります。

その後、お尋ね者と言われるロビンをおびき寄せるために弓矢の大会が開かれることに。行けば捕らえられてしまうが行かなければ臆病者だと言われる。どうしたものかと悩みますが、ロビンはその大会に出向くことに。24日はスティッチ、28日はピカチュウの声真似をして、ロビンではなくジョックという名で身分を隠しながら大会に参加し見事優勝。モノマネして自分で笑っちゃってたし、会場も思わずクスクスしてました。毎公演違うモノマネだったらしい。景品を貰い、臆病者ではないと訴えるために「素敵な景品をありがとう」と当てつけの矢文を贈る、プライドが高くて負けず嫌いのロビン。リトルジョンとの出会いも負けず嫌いが故なので、ロビンのこの性格の描写は必須なんだなと思いました。

懸賞金を賭けられてあらゆる手でロビンを捕らえようとしている中、借金を抱えた騎士を助けるなど義賊として暮らすロビンたち。そこに、変装した獅子王リチャードがロビンに会うためシャーウッドの森を訪れます。リチャード王は、一度殺人を犯したもののその後は誰も殺していないと、ロビンに対してそこまで悪い印象を抱いていませんでした。リチャード王はロビンの自分への尊敬と忠誠心を聞き、自分の元に来ないかと身分を明かし持ち掛けます。リチャード様のためならこの暮らしを捨てても良いと、ロビンやリトルジョン、シャーウッドの森の仲間は皆リチャード王に着いて行くことに。「to London town〜」と歌って踊るロビンが本当に輝いていて、この舞台でいちばん美しいロビンが表現されていた気がする。しかしその美しさは永遠じゃなくて、曲の途中でプツリと音楽が止まり照明が落とされます。ここで、今野くんが「さて」と落ち着いたトーンで切り出すんです。

 

「この先も一緒にとは言わない。何故なら悲しい結末を話さなくてはならないから。ここで席を立って貰っても構わない。」

 

原作未履修のわたしは、これから待ち受けている鬱展開を知らされて本気で逃げ出そうかと。ここの切り替えが凄くしっかりしてて、もちろん立ち上がれる訳もなく、息もできずにただ語り続ける二人を見ることしかできなかった。

ロビンはリチャード王と共に戦に出向き、しばらくシャーウッドの森には帰ってくることができませんでした。殺人は一度きりだったロビンが、恐らくこのとき弓の使い手として沢山の人を殺したのではないかと。ちゃんとした描写は無かった気がするけど、戦に出向くってことはそういうことだと思うし。もちろんロビンは戦場で大活躍。ハンティングトン伯爵と呼ばれるようになり、戦士としての誇りを手に入れます。しかし、リチャード王が戦で命を落としてしまいジョン王が国を治めることに。その後ロビンはなんとか数日の休暇を貰ってシャーウッドの森に帰ります。皆で暮らしていた頃を思い出し角笛を吹いてみると、たまたま近くにいたリトルジョンがその音を聞きつけてロビンの元に駆け付けるんですよ。更に他の仲間も角笛の音を聞いて集まってきて……ロビンはハンティングトン伯爵の名を捨て、またこの森で暮らすことを決めます。やっぱりシャーウッドの森がロビンの性に合ってたんだろうね。ほとんどの仲間が森に帰ってきた頃、ジョン王はロビンを生死問わず連れ戻そうとシャーウッドの森に兵を送ります。以前リトルジョンが捕らえられたのを助けたとき、ロビンたちは倒せるはずの敵を見逃してやりました。しかし、このときロビンたちは敵を向かえ打つことにします。平和の象徴だったシャーウッドの森は血が流れる戦場に。リチャード王と共に戦場を経験したロビンは、シャーウッドの森に帰ってきたにも関わらず、あの頃のロビンに戻ることも、あの頃のシャーウッドの森を取り戻すこともできなかったのです。なんともやるせない展開……

無事に敵を蹴散らしたものの、仲間を失った苦しみからロビンは何日も熱を出してしまいます。人の上に立つ者としての責任感もあったと思う。なかなか回復しないロビンは、以前から良くしている医学を学んでいた従兄弟の元に行くこと、森を離れることを決意します。リトルジョンを連れて従兄弟の元に訪れ、治療して欲しいと頼みますが、従兄弟はジョン王の敵に回りたくないとロビンのことを裏切ります。もうここが酷くて苦しいんだけど、塔の最上階に連れて行き、治療のためと言ってリトルジョンを引き離し、動脈を切って出血させたまま部屋に閉じ込めるんですよ。動脈って酸素を身体に運ぶ血管だよ?医者としての知識があって故意的に動脈を切るんだよ?しかも相手は親族。こんな残酷なことがあっていいのかと。どこに行っても負けなかったロビンが、身内に殺されてたまるかと。赤に染まった照明が更に心をザワつかせて、誰もが目を逸らしたくなった場面。

何かがおかしいと気が付いたロビンは最後の力を振り絞って角笛を吹きます。その音を聞きつけたリトルジョンは、無理矢理扉を開いて塔に乗り込みロビンの元へ。やっとのことで辿り着くと、力なく壁に寄りかかるロビンの姿がリトルジョンの視界に入る。ここで自分のした罪の重さに気が付いた従兄弟が顔を真っ青にしたという描写があって、赤との対比で更にロビンの命の危機を示しているような気がした。慌てて止血処置を施し、リトルジョンは修道女たちにこの部屋を出て行けと威嚇します。

ベッドに寝かせられたロビンはリトルジョンに森が見たいと頼む。ここからシャーウッドの森は見えないとリトルジョンが言うと、森が見たいんだとロビンが言う。抱き起こされたロビンは弓を渡して欲しいと頼み、「この矢が落ちたところに自分の墓を建てて欲しい」と言う。リトルジョンは「また一緒に森を走り回れるようになる」と諦めていなかったが、ロビンは自分の死を受け入れた様子で弓を引く。矢を放ったロビンは静かに腕を落とし、そのときリトルジョンには羽のついた矢のようにロビンから何かが飛び去るのを感じた。

ここでロビンの魂を矢に例えたところが綺麗で残酷だなって。初めて人を殺してしまったのも、リトルジョンと義兄弟としてここまで支え合って来たのも、シャーウッドの森の仲間と暮らしていたのも、リチャード王と共に戦ったのも、全て弓矢があってこそだった。ロビンの象徴とも言えるそれが、魂として表現されてしまうことにどうしようもなく苦しくなった。シャーウッドの森を離れる度にロビンの身に不幸が訪れるのも、一種の呪いのような気がしてきた。そしてリトルジョンは静かに部屋を出ると「あの部屋には誰も近付くな、近付いたらこの建物を粉々にする」と修道女たちに釘を刺します。本当は今にでも復讐したかったが、女と子供を傷つけないというロビンとの誓いを守り、「俺は本気だからな」と言ってリトルジョンは森の中に吸い込まれて行きます。

最後のシーン。正直咀嚼しきれてないんだけど、音楽が奏でられる中、ロビンは客席に背中を向けていてリトルジョンは客席の方を向きしゃがみ込んでるの。そこからお互い上手と下手を向いて背中合わせになり、最後は向かい合って近付き抱き合う。ロビンが背中を向けていたのは、この世にもういないことを示していたのかな。抱き合ったのは、リトルジョンも死んで天国で再会したとも捉えられるし、ロビンが死んでも二人の絆は途絶えず生き残ったリトルジョンを支えていたとも捉えられるんだよね。でも、リトルジョンが捕らえられたのを助けたときにロビンは「お前が死んだら俺も死ぬ」って言ったんだよね。だからリトルジョンが後を追ったと考えてもいいかなと。二人は義兄弟どころかお互いを片割れとしていた節があるように思えたから。

冒頭でナレーターとして二人がロビン・フッドの伝説を語るんだけど、最後に同じ台詞を言うのね。全部は覚えられなかったけど「ヘンリー二世がイングランドを治めていた頃」で始まって「ロビンたちは足りないものもなく暮らしていた」みたいな感じかな。ロビンとリトルジョンのことが今日まで語り継がれてきたこと、二人がシャーウッドの森で幸せに暮らしていた過去は揺るがないことを訴えると同時に、それが失われてしまったことを改めて突き付けられたようなラストシーンで幕を閉じました。

 

 

 

 

 

このブログを書いている間もずっと苦しくて、多分わたしはこれから何年もロビンのこと引き摺って生きていくと思う……(激重)余白がいっぱい与えられて、自分で考えながら進まなきゃいけない作品だったから、余計にダメージも大きいんだよね。自分で作り上げたロビンを最後は自分で壊さなきゃいけない。苦しすぎる。しばらくは亡霊のようにロビンの名を呼ぶだろうし、緑を見る度に思い出すだろうけど、暖かい目で見守ってあげてください。

本髙くんと今野くん、キャストとバンドメンバーの皆さん、素敵な作品ありがとうございました。ROCK READINGの第3弾も楽しみにしてます!